旅の感想




ジル・ゴリッチ チューリップのブーケ







【平成26.5.20記】

外国、といっても欧米諸国だが、街を歩いていて一番感心するのは、

歩行者の安全が完全に、といって良いくらい確保されていること

である。

日本のように、毎日のようにテレビで交通事故を知らされている者

にとっては、こんな嬉しいことはない。特に、齢七十七歳になって

自動車免許を返上し、健康のため毎日歩行にこれ努めている者に

とっては、である。

信号のない交差点に来て、右手から車が来ているのを確認する。

私は日本人だから当然車が通り過ぎていくのを待ってから、交差点

を渡ろうと立ち止まる。しかし車は、まず100%交差点の前で止まって、

私に先に渡るようにと合図するのである。運転者がここまで歩行者

について注意を払えば、交通事故は起こりようがない。

日本ではこんな情景はまず見られない。歩行者が立ち止まったら、

車は必ず先に通って行く。中には歩行者に立ち止れと促すようにして

先に通っていく。事故の起こる確率は上がって当然である。

こんな場合、現地人の歩行者は、平然と、あるいは片手を揚げながら

先に交差点を渡っていく。考えてみればドライバーにとってもその方が

有り難いのだ。通行人が通り過ぎるのを予想しながらスピードを落として

進めば、一時停車するロスが防げる。双方にとってまことに合理的だ。

私は一時停車してくれるドライバーに、一種の負担を要求したのである。

ドライバーは「ちぇつ、先に歩いてくれれば止まらなくても済んだの

に。」と思ったのに違いないのである。

これは小さいながらも東西文化の衝突であり、私は欧米の方に旗を揚

げざるを得ない。

もう一つ、道路行政のあり方について触れてみたい。

信号機のある大交差点であるが、日本では交差点の角からかなり離れた

ところに横断歩道がつけてあって、歩行者にとってまことに不便である。

しかもバス停は交差点からさらに遠く離して設けてある。交通緩和策が

歩行者側に一方的にしわ寄せされているのである。

欧米では横断歩道は交差点の角に設けてあり、そのすぐ後ろにバス停が

ある。行政がいかに歩行者優先の対策を取っているかは、日本人が多く

訪れるハワイの街を見ても一目瞭然である。

青信号の横断歩道に横たわっている車を目にするのは、日本では日常

茶飯事である。交通警官も指導さえしない。こういう車の運転者には、

反則として交通切符を渡したらどうか。

歩道橋などは歩行者優先の思想が全く欠けた代物である。車社会の到来は、

日本経済の発展には大きな貢献をしたが、人間尊重面では欠陥があった。

高齢化社会を迎えることでもあり、人間尊重を踏まえた新しい交通行政を

考えてもらいたい。